1999年12月に運び込まれた自動演奏装置付きオルガン
この時点では、半年も修復にかかるとは想像もしていませんでした。
U.S.A/England
エオリアン・オーケストレル
1920年代製造
(※画像をクリックして頂くと、拡大表示されます。)
1999年12月に運び込まれた自動演奏装置付きオルガン
この時点では、半年も修復にかかるとは想像もしていませんでした。
修復前のオーケストレル
以前、修復にトライした痕跡が随所に残っていました。
分解に取り掛かったところ。
前パネルを取り外し、スエルが見えます。
内部機構の分解
分解・点検
分解・点検
本体再塗装のため分解
修復に取り掛かる
パレット・バルブの皮の張替えとスプリングの作り直し
組み立て
空気を送るためのフイゴ(鞭)
このラバークロスも張替え。
ストップ(レジスター)の分解
金属部分は錆びが生じ、木材部は欠損がほとんどなので作り変えが必要になりました。
調整しやすいように、また、分解して修理しやすいように改良します。
鍵盤も朽ち果てていたので新たに作り変えました。
テンポモーターの修理
あまり修理するということを前提に考えて作られた物ではありませんでした。
皮ひとつを張り替えるにもカットしなければ手が入らないなど、
ネジ止めではなく、接着されているため、場合によっては潰す覚悟で分解しなければなりません。
リードセクションボックス
このボックスから各リードボックスに空気が送り込まれます。
気密性はもちろん、レジスターから続くカプラーの動きもスムーズでなければバルブの開閉不良につながり、音が出なかったりストップを戻しても鳴りっぱなしなどの症状が出ます。
バルブボックス
残念ながら古い(オリジナル)の部品の写真はあまり撮っていなかったので比べることが出来ませんが、これ全部再設計し、作り変えました。
再塗装終了
気の遠くなるような部品点数で大変な作業が続きました。
途中の工程をお見せするといたずらに写真を増やすだけなのでやめますが、
木工・欠損部分の修復から仮組み、下地塗装、研磨、仕上げ...と
思い出しただけでもゾッとしますが、仕上がったときの喜びに適う物はなく苦労が全部吹き飛んでしまいます。
ミュージックロールを巻き取るためのボックス
よくここまで錆びさせたものです...
空気を送るためのフイゴ(鞭)のラバークロスです。
このように紙を裏打ちし、補強します。
リードボックス内部
これがメインのリードボックス
この仕組みがオーケストレル最大の特許部分です。
サブバスのリードボックスを分解したところ
サブバス内部の修理
自動演奏装置の修復で一番大切なのは精度と気密性です。
また、適材適所も重要で、80年前の物よりも進化したもの(当時にはなかったもの)で、代替できものもありますが、基本的には当時の材質のものを使います。
或いは、バルブの動きなど、核心をに触れる部分は耐用年数が悪くとも天然素材を使用することもあります。
ですから、修理出来るよう(しやすいよう)に製作する(改良修復する)ということも考えなくてはなりません。
これによってオリジナリティーが損なわれるということではありません。
トラッカーバー周辺
トラッカーバーとは、ミュージックロールにあけられた穴から空気が侵入する部分で各音程一つ一つに対応しています。
このオーケストレルは58NOTE、すなわち58鍵のオルガンです。
ダイアフラムパウチ
この部分が最終的に作動し、リードへ風を送るパレットバルブを開閉します。
リードボックスの数は6列、58鍵分
すなわち、これが単純計算で348個あります。
写真は虫に食われ穴の開いたダイアフラムの皮の交換の様子です。
これで1個出来上がり......
もう勘弁.....でもやらねば。
これを怠ると後悔します。
当然パレットバルブも348個。
スプリングも348個。
トラッカーバーから延びるパイプ
新規製作したバルブシステムへ空気を送るパイプを接続します。
リードボックスの組み付け
音色の違うリードを一段一段くみ上げていきます。
レジスター(ストップ)の組み付け
音色を選択するストップを取り付けたところです。
鍵盤のところについているこの音栓(ストップ)を引っ張ることによりいろいろな音色を選択することが出来ます。
英語などで書かれているのであまり意味がわからないと思いますが、基本的には真ん中を中心に左右対称に並んでいます。
外装の組み上げ
全修復完了
現在、浜名湖オルゴールミュージアムに展示中
1時間ごとに開かれるミニコンサートにて聴く事も出来ますが、
プログラムの都合で演奏されない場合もあります。
そのときは、聴かせてほしいとリクエストすれば、演奏してくれるはずです。